――クランクイン前に、脚本は出来上がっていたのですか?
満島「骨組み程度でした」
夏帆「土台はあったんですけど、未完成の状態のまま撮影に臨みました。撮影の当日に、新しいシーンが加わることもあって、現場で、私(の役)ってこういう背景があったんだ!と驚くこともありました(笑)。役を作るという上では大変でしたね」
満島「困らないといったら嘘になるよね。でも逆に何が起こるか分からないワクワク感も大きかった」
――特にアジア映画ではそういうことも多いと聞きますね。
満島「確かに。日本では形がガチっと決まっていて、その箱の中で芝居をすることが多いなと感じています。良い悪いと判断するわけではないんですが、なかなか変わらない。でもこの作品には箱がそもそもないんです。だから自分たちで形を作っていく。とても面白いし、そういうことが園さんの作品にはよくあるなぁと。
夏帆「先が見えないというのは、役者ももちろんですが、スタッフさんもいろいろ準備や必要なものがあるので、大変ですけどね(苦笑)。とにかく無我夢中でした。
――夏帆さんは、今回アクション初挑戦です。
夏帆「練習する時間もあまり取れなかったので、満島さんにすごく助けてもらいました。一応決められた動きはあるんですけど、一連で撮っていくので、だんだんテンションが上がっていって、決められた動きもできなくなっていってしまうんです。でもそういう中でも満島さんが対応してくれました」
満島「怪我をする危険性があるので、ほとんどが当たらないアクションになるんです。でも、今回は当たっても終わりじゃない。撃たれながらも、切られながらも続けなくちゃいけない。人間ではなくヴァンパイアなので。これまでのアクションが力にもなっていますが、また違う感覚でした。アクション監督の方も、今までにないものを作るんだと楽しんでくれていました。夏帆ちゃんは、ほかの現場に行ったら、こんなにシンプルでいいんだって思うんじゃないかな(笑)」
――Amazonプライム・ビデオだからこそという新しさは感じましたか?
満島「この作品は、僕のなかで1つの希望を感じました。ヴァンパイア自体、そもそも日本の文化にないものだし、すごくおもしろい挑戦ができたなと。男と女がガチンコで戦う、しかも銃と刀でなんていうのも珍しいし。こういう作品をどんどん作っていってほしいなと思っています。待っていてもしょうがないので、企画を出そうかとも考えていますよ。『東京ヴァンパイアホテル』ができたんだから、これから先、いろんなことに挑戦していきます」
夏帆「すごく自由な作品ですよね。概念とかに縛られず」
満島「世界の作品に目を向ければ、『アメリカン・ゴッズ』という作品で、SNSの神が出てきたりとかしていて、概念ぶち壊しのものをやっているんですよ」
夏帆「原作があると、それだけで縛りができるけれど、オリジナルだといろいろ遊びもできますよね」
満島「人間の脳の中にある可能性って、まだまだたくさんある気がするし、観ている人のレベルも上がって、見ている作品の幅もすごく広がっていると思うんです。それこそ映画館に行かなくても、今回のようにいろんな作品が観られる。だからこそ、挑戦していくのみです」
――俳優として活躍しているおふたりから、芸能界を目指している読者へオーディションの心構えはありますか?
満島「それは夏帆ちゃんから」
夏帆「いやいや、私もオーディションの必勝法なんて分からないです」
満島「あれ、どうやって芸能界に入ってきたんだっけ?」
夏帆「私は原宿でスカウトされたんです」
満島「じゃあ、意識的に町を歩くしかないな」
――芸能界を目指すうえで、大切にしたほうがいいことはありませんか?
満島「自分自身を忘れないこと。自分自身と向き合い続けること」
夏帆「それは大事ですね。目指すだけでなく、続けていくうえでも大切」
満島「絶対に大事。周りに合わせていくことは、自分に嘘をつくことになってしまう。人はそれぞれ絶対に違うものを持っているし、自分は自分であると信じる力をつけなきゃいけない。必要としている人はどこかに必ずいると、僕は信じています。だからオーディションに落ちたとしても、めげる必要はない」
夏帆「そうですよね。縁がなかっただけです」
満島「俺もオーディションとか、受かったことないもん」
――夢を実現したいのなら、自分を信じる?
満島「そう。自分を信じられる状態を、常に作っておく」
夏帆「難しいですけどね」
満島「難しいことだけど、それしか方法はない気がしますね」
夏帆「確かに、大事なことだと思います」
Photo/吉井明 Text/望月ふみ