――地元の岐阜県で所属事務所のスウィートパワーのかたにスカウトされたのが、デビューのきっかけだったそうですね。
はい。こんなところにまで来るんだってビックリしました。「えっ!?」と思って、最初は全然信じられませんでした(笑)。
――芸能界へのあこがれはありましたか?
全然なかったんです。
――そんな松風さんがスウィートパワーに入ろうと決めたきっかけは何ですか?
先輩がたのお仕事の現場をいろいろ見させていただいて、やってみようと思ったんです。
――今は岐阜を離れて東京で寮生活を送っているんですよね。楽しいことと大変なことは何ですか?
都会なので近くにいろんなものがあって、映画館にもすぐ行けるし、すぐ遊びにも行けるのが楽しいです。地元だと車での移動が普通で、親がいないと行けないところもあったんですけど、今は自分で勝手に電車に乗って出かけられるので(笑)。それはすごくいいなあと思ってます。逆に大変なのは、家だと洗濯や掃除は親がやってくれてたけど、それを自分でやらないといけないことです。朝はバタバタしちゃうから夜のうちにやらなきゃとか思いながらやってます。
――スウィートパワーはどんな事務所ですか?
スタッフは女のかたばっかりで、それと先輩がたがすごく優しくて、寮とかでもやさしく話しかけてくださいますね。
――事務所に入って受けたレッスンでタメになったものは、どういうものがありますか?
何でもタメになりました。演技のホン(台本)読みもそうですし、ちょっとした発声や体の使い方を教わるのも勉強になりました。演技って、ただ台本のセリフを読むだけじゃなくて、体の動きとかもあるので。
――記念すべき映画初主演作の「トモシビ」が公開されますね。
すごいうれしい気持ちもあったんですけど、やっぱり主演ということで緊張もしますし、ドキドキする気持ちも大きかったです。
――最初に台本を読んだときの感想を教えていただけますか。
銚子の小さな町で起きる、身近に感じられるストーリーだなと思いました。はじめて同い年ぐらいのかたとたくさん共演するので、それも楽しみでした。駅伝のシーンもすごく楽しみにしてました。
――松風さんが演じる杏子(あんず)ちゃんはどういう人物ですか?
いろんなことにまっすぐで、決めたことをやりとおす。そんな子です。
――杏子ちゃんはどうして、銚子電鉄の電車と高校生が競争する駅伝をやろうと考えたんでしょうか?
廃線の危機もあった銚電なので、毎日通学で乗って銚電に愛着があった杏子ちゃんには、駅伝のイベントで銚電を元気づけようって思いがあったんだと思います。
――映画は、ホームに到着した銚電の電車に杏子ちゃんが乗り込むシーンから始まります。
あそこは、電車の時間の関係もあって、何回かしか撮るチャンスがなかったんです。でも、理由はわからないんですけど、1回目はドアが開かなかったんです。それで、あと1回しか撮れないってなって、すごい緊張しちゃって(笑)。
――撮影は全部、銚子でロケを行なったんですよね。
自然がきれいなところでした。森もあるし、海もあるし、畑もあるし、きれいな町だなって思いました。
――杏子のお母さん役の富田靖子さんや、銚電の運転士の磯崎さんを演じた、よゐこの有野晋哉さんなど、キャリアのあるかたとの共演はいかがでしたか?
家のシーンでお母さんと一緒にいる杏子は、学校のシーンで友達と一緒にいる杏子と違って。お母さんの優しさを受け取るけど、複雑な気持ちもあるので、富田さんとも撮影前にお芝居について話し合いました。
――富田さん演じるお母さんと、有野さん演じる磯崎さんが仲良くなることに対して杏子ちゃんが複雑な気持ちでいることが、よく伝わってきました。
監督ともけっこう話したんです。杏子ちゃんはまっすぐな性格だから、人の目を見て話すし、誰に対しても明るい態度なんですけど、有野さんに対しては冷たくて、目も見なくて、あんまり関わらず、そっけない態度をとるんです。他の人に対しての姿勢とは真逆の感じで。
――完成した映画をご覧になっての感想は?
自分が出ているところは、やっぱり見ていると反省というか、「もうちょっとこうしたらよかった」っていうところに目が行くんですけど、他のかたのシーン、たとえば植田真梨恵さんが歌うシーンは、きれいな景色の中にきれいな歌声が響いてすてきだなと思いました。駅伝のシーンは撮ってるのを見てないところもあったので、こんな感じになるんだと改めて感じました。駅伝のシーンはいちばん見てほしいところなんですけど、そこに向けての人と人との関わりも見てほしいです。
――これまでのお仕事も振り返っていただきたいんですが、最初のお仕事は堀北真希さんと共演した東京メトロのCM(「私を惹きつける池袋篇」)だそうですね。
本当に初めてで、何もわからないままやっていたので、今見ると、めっちゃ堅いなあって思います(笑)。
――松風さんは今年キットカットの6代目受験生応援キャラクターに就任しましたが、これまでもキットカットのネスレのショートムービーに出演なさってますね。
3本出させていただいていて、1本目(「そちらの空は、どんな空ですか?」)は知英(ジヨン)さんと一緒だったんです。本格的な演技のお仕事は初めてで、わからないままやってる部分も多くて。でも、監督さんが自由にやっていいよと言ってくださったので、自分で考えながらやりました。慣れてなかったけど、あの役にはよかったかなとも思います。
――松風さんが演じたのは新しい環境と人間関係にとまどう女の子だったので、慣れてないところが役に合ってたんじゃないでしょうか。
ただただ必死にがんばりました。
――松風さんがオーディションを受けるときに心がけていることは何ですか?
台本を渡されたら、家で読んで、できる限り想像するようにします。オーディション会場では、ただ目立とうとするだけじゃなくて、それよりも礼儀を大切にして、あいさつは絶対しっかりして、声は大きく、相手の目を見て話すようにしています。あとは、できるだけ自分の印象を残せるように心がけています。
――今後の目標も教えてください。
演技が上手な女優さんになりたいので、もっともっと演技力を高めたいです。
――「こういう作品に出たい」という夢はありますか?
ミステリー小説を読むのが好きなので、刑事ものや探偵ものをやってみたいです。
――どういうミステリー小説が好きなんですか?
アガサ・クリスティさんの『そして誰もいなくなった』とか『ビッグ4』、あとは東野圭吾さんの『どちらかが彼女を殺した』とかが好きです。
――最後に芸能界を目指す人にメッセージをお願いします。
私は昔からあこがれて芸能界に入ったってわけではないんですけど、お仕事をやっていく中でやりがいや楽しいこともあって、ちょっとずつ成長していけると感じています。自分にできることを一生懸命やっていけば、きっといいほうに行くんじゃないかなと思うので、今できることをやることが大切なんじゃないでしょうか。
Photo/ヨシダヤスシ(昭和基地¥50) Text/武富元太郎