――本郷さんは子供のころから芸能活動をしていますよね。
幼稚園のときに家族が応募して、地元の仙台のモデル事務所に所属したんです。いろいろなつながりがあってだと思うんですけど、東京で映画のオーディションを受けさせてもらえるようになって、演技の仕事をするようになりました。高校生ぐらいになって映画やドラマにちゃんとした役で出させてもらえるようになって、やりがいが見えてきて俳優を一生続けていけたらいいなと思うようになったんです。
――これまでたくさんの作品に出ていらっしゃいますが、思い出深い作品は?
映画だと「GANTZ」になるのかな。規模の大きな作品でしたし、今でも「『GANTZ』に出ていた」と言われることが多いので、自分にとって大きな作品なのかなと思います。
――その「GANTZ」や今回の「闇金ウシジマくん」など、漫画原作の作品に出られることが多いですね。
ただ、ベースとなるキャラクターは原作にいるんですけど役名も変わっていますし、今回に関しては漫画のキャラクターを意識することはゼロでしたね。僕がやらせてもらう作品って「進撃の巨人」や「鋼の錬金術師」とか架空の世界のものが多いんですけど、「闇金ウシジマくん」は現実の世界が舞台ですから、お芝居の組み立てかたがまったく違うんです。久しぶりに普通の人間を演じたかなっていう感覚です(笑)。
――「闇金ウシジマくん」にはどういう印象を持っていらっしゃったんですか?
もともと原作が好きだったんですけど、読み終わった後にメンタル面がマイナスになるというか(笑)。非常に強い作品ですよね。ドラマ版と映画版も実写で見るからこそ、その強さが増している印象です。作品の持つ生々しさが実写向きで、山田(孝之)さんはウシジマの何を考えているか分からない怖さを見事に表現なさっていると思います。
――非常に濃いキャラの登場人物ばかりですよね。
気になるキャラクターがいっぱいいるんですよ。前野朋哉さんが演じた"しんこch."も面白いですし、ヤンキーのカップルの苅部とモエコがふたりで1分間ぐらいしゃべる、すっげえ意味のない時間も大好きです。苅部はすごいっすよね(笑)。浜野謙太さんの天生先生もいいですよね。天生先生のまわりには常にきれいな女性がたくさんいるので、浜野さんも楽しそうでした(笑)。
――それに対して、本郷さんが演じる沢村真司はどういう人物でしょうか?
平均的ではないけど、「こういう若いお兄ちゃん、たくさんいるよな」という印象の男ですね。「何者かになりたい。お金持ちになりたい」みたいな願望はみんなにあるものだと思うんですけど、真司はその願望のために一歩自分から踏み出せるキャラクターかなと思います。僕も割とすぐ思い立ったら行動するタイプなので、そこは共感できましたね。
――完成した作品をご覧になって特に印象に残ったシーンは?
ラストシーンは特に好きですね。お金や人間関係に関しては真司の手もとには何も残らなかったけど、心には残っているものがあって、心は一段階前に進んでいる。作品としてすごくきれいに終われているのかなと思います。
――本郷さんは今もオーディションを受ける機会はあるんですか?
そういう機会があれば受けますよ。受ける機会が多かったのは小学生中学生ぐらいまでだったと思います。
――もし後輩の役者さんから「オーディションを受けるときにはどうすればいいですか?」とアドバイスを求められたらどうしますか?
とりつくろっても、結局は長い目で見たらボロが出るから、あんまり「どうすればいいか」って考える必要はないんじゃないですか。あえてアドバイスをするなら、そういうことでしょうね。それから、芸能界を目指すなら自分で何かアクションを起こさない限りチャンスは巡ってこないので、そのために調べたり考えたりすることはマイナスにならないと思います。情報をちゃんと冷静に判断して、悪い大人にダマされないようにしてほしいですね。
――本郷さんご自身の今後の目標を教えていただけますか。
オファーをいただけるうちが華だと思っていて、自分に役をやってほしいと言ってもらえるのはすごくうれしいことなので、ちゃんとご期待に応えて続けていくということだけですね。アーティストと違って完全なセルフプロデュースはできない仕事なので、与えられたものに誠意をもって取り組んでいけば、次につながっていくのかなと思います。
――作品をプロデュースしたり作る側に回る役者さんもいらっしゃいますが、本郷さんはそちらには興味がないんですか?
それはそれですばらしいことだと思うんですけど、僕自身は今のところは興味がないんです。僕は役者はひとつのコマであるべきと考えているんです。
――あくまで作り手のビジョンを体現する立場ということでしょうか。
そうですね。今回の『闇金ウシジマくん』でも山口雅俊監督と密に話し合って、監督のやりたいものをそのイメージのとおり体現するようにしました。
――では、最後に改めて『闇金ウシジマくん』の見どころを教えてください。
どのキャラクターに感情移入するかを見てる側が選べる作品なんですが、いろんな人物が出ているので、必ずどこか一カ所は引っかかるところがあると思います。感情移入したキャラクターを追いかけて見てもらえれば、何か感じるものがあるんじゃないでしょうか。
Photo/金丸雅代 Text/武富元太郎 Styling/川地大介