――今回の田村さんの泉光子郎役と荒川さんの望月芽心役はオーディションで決まったんですか?
ふたり「はい」
田村「子供のころから『デジモンアドベンチャー』を見させていただいていたので、マネージャーからオーディションがあるって聞いたときに"マジか! 受けたい!!"と思ったんですけど、よくよく考えたら登場キャラは男の人が多いな、と。私は普段、男の子役が多くて、小中学生ぐらいの男の子役だったらオーディションを受けさせてもらえるんですけど、今回は年齢が上の役だからオーディションの話さえもらえないかもしれないと思っていたんです。だから、受けさせていただけることになって、もう背水の陣というか(笑)、"ダメでもしょうがない!"という感じで受けました」
荒川「田村さんと同世代で私も『デジモンアドベンチャー』に思い出があったので、オーディションを受けられるだけでテンションが上がりました。オーディションの時点では芽心はいなくて、空(※旧シリーズから登場している女性キャラ)役を"空ちゃんが大人になったらこんな感じかな?"と思いながら受けました。事務所から"受けた空役は落ちたんだけど、芽心役で決まりました"と連絡をいただいたときはビックリしました」
スタッフ「芽心はふんわりしてるんだけど芯の強い雰囲気のキャラクターということが決まっていて、オーディションの音声を聞く中で監督が"荒川さんがいいんじゃないか"とおっしゃって、いろんなスタッフも大賛成して決まったんです」
荒川「そうだったんですね。今、初めて知りました(笑)」
田村「すごくピッタリだとみんな思ってるよ」
――おふたりとも旧シリーズのファンだったんですね。
田村「子供のころってああいう冒険モノって好きですよね」
荒川「ゲームも弟と一緒に遊んでました」
田村「私も弟と遊んでましたね」
──当時、お好きだったキャラクターは?
田村「アグモン、好きでした。パートナーの太一の"ザ主人公!"という感じも......」
ふたり「熱い!」
荒川「私はヤマトさんとタケル君の兄弟が好きでした」
田村「あのふたりには特別感があったよね」
荒川「一番はタケル君で、デジモンもタケル君のパートナーのパタモンが好きでした。パタモンには本当に癒されますね」
――演じているキャラのパートナーデジモンでなくてもいいんですが、今回の「tri.」でお好きなデジモンは?
田村「やっぱり光子郎のパートナーのテントモンですね。光子郎との距離感も絶妙で。他のデジモンの可愛い子供のような感じとも違って、オカンっぽいんですよ(笑)」
荒川「たしかに(笑)。テントモンの"光子郎はんがおしゃれな服を探す日が来るなんて..."ってセリフも、成長を見守ってきた感じがしていいですよね。私も芽心のパートナーのメイクーモンが一番ですね」
田村「可愛いよねえ」
荒川「第2章では他のデジモンもメロメロになってました(笑)」
――おふたりが声優を目指したきっかけを教えていただけますか。
田村「アニメの『るろうに剣心』を見ていて、瀬田宗次郎を日高のり子さんが演じてらっしゃるのを知って、"女性なのに男性役をできるんだ。いいな"と思ったんです。小学生ぐらいのころから宝塚にあこがれがあったんですけど、"男の子役だけじゃなくて、声優なら背の高いきれいなお姉様もできる。キャラクターとかもできる。なんにでもなれる可能性があるじゃないか"と思って目指すようになりました」
荒川「私もアニメがきっかけでした。好きだった『シャーマンキング』がアニメ化されたときに、すごく好きだったヒロインのアンナちゃんの声が、漫画を読んでいたときに自分の中で勝手に想像していた声とぴったり一致したんです」
田村「おおっ!」
荒川「アンナちゃんは林原めぐみさんが演じていらしたんですけど、たぶん、どこかでお声を耳にしていて、それを無意識のうちに当てはめたんじゃないかって気づいて。そのときに声優ってお仕事があるんだってすごく意識したんです。私は、もともと看護師になりたいって目標もあったんですけど、林原さんも看護師の資格をお持ちなんですよ。それは偶然なんですが、声優として活躍される方の中には転職された方もいらっしゃると知り、"声優と看護師のどちらかひとつに絞らなくても良いのかもしれない"と思って、ふたつやるにはどうしたらいいかって考えながら声優を目指していきました(※荒川さんは実際に看護師として働いていた経歴の持ち主です)」
――おふたりとも養成所に通っていたとのことですが、印象に残っているレッスンはありますか?
田村「詩を自分たちの解釈でグループで舞台化したのが、印象に残ってます。めちゃくちゃ難しかったんですけど、実際にやってみると見た人が盛り上がってくれたりするのが楽しかったですね」
荒川「『ごん狐』などを朗読するレッスンがあって、私は地方出身なこともあってアクセントを意識していたんですけど、"ただきれいに読んでも面白くない"と言われたのが心に刺さりました。"情景を思い浮かべながら読むんだよ"と教えてもらったのが、ずっと忘れられないですね」
――田村さんはデビューの翌年に『バトルスピリッツ 少年突破バシン』で初主演でした。荒川さんは初めて受けたオーディションが主演作の『輪るピングドラム』だったそうですね。経験の少ない時点での主演は大変でしたか?
田村「早くちゃんとできるようになりたかったので、微妙に先輩の台本を盗み見たりしてました(笑)」
荒川「台本にどういうチェックをしてるのかは、私も見せていただきました」
田村「皆さん、すごく優しくて、マイクワーク(※収録スタジオでのマイクの使い方)のこととかも教えてくださったんですけど、すごい緊張しましたね。緊張して、30話ぐらいまで休憩中もロビーに出られなくて(笑)。ロビーでペチャペチャしゃべってたら、"あいつ、遊んでやがる"って思われるんじゃないかと思ったんです(笑)」
――心配性だったんですね(笑)。
田村「でも、スタジオ内に残ってる人とめっちゃしゃべってたんですけどね(笑)」
荒川「あはは(笑)。私も先輩の皆さんに助けていただきましたね。"セリフが台本をめくった次のページにまたがるときは、セリフを前のページに書いておくんだよ"とか、本当に手取り足取り教えていただけて。恵まれていましたね」
――では、最後に改めて『デジモンアドベンチャーtri.』の見どころを教えてください。
田村「『デジモンアドベンチャー tri.』の魅力は絆かなって思っています。第3章で起きた"リブート"でデジモンたちの記憶がリセットされてしまうんですが、そういう大変なことが起こっても変わらない何かみたいなものが魅力なんじゃないかと」
荒川「記憶を失うところは、もともとの『デジモンアドベンチャー』を見ていた方は特に衝撃的だったと思います。私も台本を読んだときにはすごく感情移入して見てしまいました。キャラクターたちがつまずいたり悩んだりする姿に共感し、前を向き立ち向かう姿に勇気を与えられ、世代を超えて親しまれる作品になるのではないかと思います。『tri.』から入った人も初代『デジモンアドベンチャー』も見てみたいなと思ってくださるような気がするんです」
田村「うんうん。あ、第4章でも光子郎はまた超長いセリフをしゃべってます。毎回、監督がニヤニヤしながら"今回も用意しといたよ"って言ってくるんです(笑)」
荒川「お待ちかね、みたいな感じですよね(笑)」
Photo/吉井明 Text/武富元太郎