芸能界の第一線で活躍する作り手や、演じ手に会いに行くインタビュー企画
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 2010年秋、『釜山国際映画祭』クロージング作品として上映された『カメリア』がいよいよ日本公開を迎える。韓国、タイそして日本を代表する3人の監督が釜山を舞台に描いた"愛"の世界。この中で日本からは、『GO』『世界の中心で、愛をさけぶ』の行定勲監督が、メガホンを取った。その行定監督に作品の制作エピソードやキャストの話、さらにオーディションについて、じっくり聞いた。
■自由度を感じながら撮ることが出来た作品

――今回、オムニバス作品『カメリア』の中の『kamome(カモメ)』を撮られることになった経緯からお聞かせいただければと思います。

「釜山国際映画祭にはずっと関わりを持ってきて、この映画祭からオファーを頂いた時に、恩返しをすべく、映画を撮ろうというのがまずありました。"釜山で撮る"ということと、"愛"というのがテーマとしてあったんですけど、"愛"といっても、友情だったり、普遍的な愛だったり、あまりにも広すぎるので、何をやろうかなとずっと脚本家の伊藤(ちひろ)と話をしていたんです。そんな中で、2009年の釜山国際映画祭の時に、昼間、釜山の街をいろいろと回ったんですね。そうしたら、海岸にはカモメがいっぱい飛んでいて、美しい風景で。さらに、街中を歩いてみたら、「国際市場」のちょっと外れたところに雰囲気のある長い階段があり、"これもいいなぁ"と思って......。夜、もう一度見に行ったら、階段の奥がすごい闇の中で、すぐに"ここ使いたいな"と思いました。そして、その階段のさらに先を行くと、そこは居住区になっていて、幻想的な路地が広がってたんです。そこも素晴らしい景色でした。そうやって、ロケハンに行く中で、釜山という場所が自分に語りかけることがすごくあったんですね。そこから組み上げていった感じでした」

――街から受けたインスピレーションから作品が生まれたという。

「そうですね。釜山という街が、そして、この映画祭が我々にこういう映画を作るチャンスをくれて、すごく自由度を感じながら作ることが出来たという感じですね」

――監督としても珍しい形式ですか?

「こうやって純粋に作ったオリジナル作品......アイディアを出して、それを捨てて、また捨てたものをもう一度直したり......そうやって組み上げていくのは久しぶりですね。なんか自由だったんですよね、ここ数年こんな自由なことはなかった......。初期の『贅沢な骨』(2001年)という作品を作って以来、やっていなかったと思いますね。やっぱり、映画ってこれぐらい自由なものだからこそ、世界の映画人たちは時々ものすごい作品を作るんですよね。僕はそのひとかけらだけでも与えてもらったなと思ってます。映画祭が作るものっていうのがこれぐらい開放させてくれるんだなということを再認識しました。ここ数年、原作のある作品をやってきて、いつの間にか自分を縛ってたところがあると思うんです。"こういうオチがないと"とか、"衝撃的な何かを入れないと"とか......。でも、ひょっとしたら、何もしなくても映画なんじゃない、っていう。光がキレイだとか、なんかこの時間がいいなとか、そうした何気ないものが描かれていても映画なんじゃないかと今回改めて思いましたね」

■現場に衣装を着てやってくるソル・ギョングの姿勢
行定勲インタビューカット

――その何気ない世界をソル・ギョングさん、吉高由里子さんというふたりが見事に演じられました。

「そういう意味では、本当にソル・ギョングと吉高由里子が、夜の釜山を歩いてるだけでも映画だよね、っていう(笑)、それを創造させてもらったと思いますね」

――監督からご覧になって、この二人の俳優は......。

「ソル・ギョングは、素晴らしい俳優です。まず彼が大事にしてるのが、情緒。自分が持ってる韓国人としての情緒と、演出家の僕が持つ日本人の情緒。それを作品に溶け込ませたることが重要だと考えている。日本人の僕の演出をちゃんと自分のものにしてフィルムに結果を残す。"もっとこうしたほうが"とか、"こう撮ってくれ"とか言ってくる俳優がいるけど、彼はそういうのはまったくない。まず、台本抜きでお互いを知ろうとするんですよね。"台本の話をしましょう"っていうのはまったくなかった。それよりも、まず監督が何をやりたいのか、というのを全身全霊で分かろうとする。今回、彼の発想は、日本の情緒を重視しつつ、韓国人が見ても遜色ない演技をするという......それが絶対に新しい自分の演技を作り上げる、という思いを持っていましたね。決して口に出しては言わないけど、見えてくるんですよね」

――正しい表現かわからないですが、演技にいわゆる"どや感"がない方ですね。

「そういうのは全くない。自然体だから、当たり前のように芝居するんです。彼はいつも衣装のまま部屋に帰るんですよ、で、朝起きたら衣装を着て現場に現れるんです......洗ってないです。"面倒だからだよ"って彼は言うけど、ちゃんと服だって表情が出てくることを分かってる。そして、それを吉高由里子はちゃんと気付いてましたね」

――ソル・ギョングさんのそういった姿勢を?

「そう。"なんで、衣装のまま帰るの?""面倒だからね"って、そういうやりとりをしていたけど、吉高由里子はきちんとそこを気付いてた。また、逆にソル・ギョングにとって彼女は衝動的な女優だったらしい。"韓国にはいないタイプだ"と言って、"僕も見習いましたよ"と話してましたね」

――監督から見た女優・吉高由里子の印象は?

「真面目なやつなんだろうなぁ、という印象ですね。この作品ではほとんど素でやってもらいました。変なリアクションを求められたりすることが多い中で、ここでは、そういうことは、させない。ただ放り投げる......そういうのを撮っておきたかったんですよね。放り投げられたらそれに対応するしかなくなるじゃないですか。僕はそういうところを吉高で見てみたいなと思ったんですよね。そこは素直に対応してくれたと思います」

■上手い下手ではなく、与えられた芝居を的確に!

――監督の作品といえば、映像の細部へのこだわりが語られますが、今作でのこだわり、というと......。

「何にこだわったかといえば、全部(笑)。全部なんだけど、ひとつ例をあげると、韓国は路駐が多いんです。でも、この映画の中で、路駐されてる車はほとんど出てこないですね。その裏には何が起こってるかというと、スタッフが全部どかしてるってことなんですよ。韓国人スタッフが1台1台声をかけて、移動させてる......全部で40台以上。あとで聞くと"監督に路駐のこと言われた時は冷汗かきましたよ"って。"でも、文句言わずにやってたよね"って言うと、"やるしかないですよ!"って。そういう姿勢でやってくれた。映画やっててよかったなと思う瞬間ですよね」

――今作に限らず、さまざまな作品でオーディションを行ってこられたと思うのですが、最後に、監督からオーディションを受ける方へアドバイスをいただければ。

「まずは、パターン化されたアピールをしない。あと、下手で当たり前なんですよ。だから上手い下手じゃない。例えば、今回韓国で、何人か脇役のオーディションをやって、一人、女の子なんですけど、すごく表情がよかったんです。名も知れない女優さんなんだけど、すごくいい表情なんですよ。......パッとしないんだけど、出過ぎない芝居をちゃんとやることが出来るんですよね。与えられた芝居を的確にやる。たぶん、オーディションを受けてる時点で、主役オーディションというのはあまりないから、脇役として的確にその表情を持って、的確に演じることが出来る、それが大事だと思うんですよね。これはどういう設定でどういう表情をすればいいかっていうのを捉えられる。それには、人間観察が常に自分の中で出来ているかっていうかというのが重要でしょうね。あと、ひとつ言えるのは、いきなり主役を夢見たりするのはやめましょう、ってことですね。映画を見るんだったら、自分たちはどこからスタートするかっていうのを想定して、主役ではなく、脇役の人を見る。もちろん、中にはいきなり主役という子もいるのかもしれないけど、主役オーディションにおいても、主役オーディションなりの謙虚さが必要。そして、何といっても、的確にやれること、それに尽きると思いますね」
(取材=2011年9月某日)

取材・文=田部井徹(トリーヌ) 撮影=梅木麗子

映画『カメリア』

リリース  タイ、日本、韓国を代表する3人の監督が、全編釜山ロケでラブトーリーに挑んだオムニバス作品。
 行定監督が手掛ける「Kamome(カモメ)」は、自身をカモメと名乗る少女(吉高由里子)と、映画監督のパク・ヨンス(ソル・ギョング)の出会いから始まる、美しく切ないラブストーリー。

http://www.camellia-movie.net/
配給元/東映 (C)2010 BALCON/SIDUSFNH
行定勲
ゆきさだ・いさお
1968年8月3日、熊本県出身。第25回日本アカデミー賞で最優秀監督賞などを受賞した『GO』や、『世界の中心で、愛をさけぶ』をはじめ数々の話題作を手掛ける。映画/『北の零年』『クローズド・ノート』『パレード』『女たちは二度遊ぶ』、PV/NMB48『絶滅黒髪少女』ほか
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