芸能界の第一線で活躍する作り手や、演じ手に会いに行くインタビュー企画
[side-A]
 板尾創路さんの第2回監督作品『月光ノ仮面』が公開される。終戦直後の生と死の混乱を落語の「粗忽長屋」をベースに描く。奇才・板尾創路の表現へのこだわりとは? そして若き俳優を目指す人たちへのメッセージとは......。
■クライマックスシーンは芸人としての究極

――最新映画『月光ノ仮面』。そもそもどんなところから発想されたんですか?

「クライマックスの寄席小屋のシーン、あのシーンが最初に頭に浮かんできたんです。こういうシーンってあんまり見たことないなと思って。最初にあれがあって、そのシーンがメインになるような話を書こうと思って、そこに向かって話を作っていった感じでした」

――最初の段階で現代ではなく、あの時代の寄席としてイメージが浮かんでたんですか?

「時代はまだそこまで明確ではなかったですけど、ああいう感じの場所でっていうのは浮かんでいました」

――あの強烈なシーンが浮かんだのはなぜだと思われますか?

「芸人として舞台に立つ経験の中で、客と自分との距離というか、そこで行われているライブのイメージというものがあれに繋がったんでしょうね。極端なイメージですけど、こういう描き方もあるのかな、みたいなところは意識の中にあったんやと思います」

――あれは芸人さんにとって究極の状況じゃないですか。

「僕は究極やと思います。あそこまでの感覚はそうそうないと思いますけど、ひとつの映像的な手段として表現すればああいうことですよね。かなり過剰やし、妄想とも取れる......でも、僕の中では成立しているんです」

――あのシーンに向かって構築していく中で、時代設定だったり、ベースに流れる落語「粗忽長屋」だったりというのはすんなり決まっていったんですか?

「落語だったら古典落語のイメージがあったし、僕は昭和の時代が好きなので、その時代を描こうというのはすんなり決まりました。あとはどういうふうに物語をドラマチックに作っていくかっていう。最後はああいう感じなので、ファンタジーっていうか、ちょっと現実離れしている感じに作っていったんですけど......」

――ただ、現実離れしているのに、ものすごく生々しい、不思議な空気感が漂うなと。

「なかなか言葉にして伝えるのが難しいものなんですけど、何が一番伝わりやすいかなって考えると、"僕がこういう夢を見た"っていうのをみんなに見てもらってるということかなと。夢っていうのは、見てる時はそれがすごくリアリティに感じて、でもあり得ない設定とかあり得ない人物とか出てくるじゃないですか。その時は現実として受け止めてても、覚めてみると滑稽だったり......」

――確かに、そういう感覚ですね。

「"その時はそうやってん!"っていうような、その時はリアリティやったというあり得ないこと。人の夢の中を見てるような感じで見てもらえると、すごく入ってきやすいのかなと思いますね」

――板尾さんが監督されるときはそんなにガチガチに決め込んでいくのではなく、役者さんにまかせつつ、現場で作っていくスタイルだそうですが。

「演出はそういう感じですね、そんなに決めこんでいくことはないので。多少の修正はしますけど、任せます」

――逆に言うとキャスティングの段階でかなりきっちりイメージに合致する方を起用しているという。

「そうですね。言ってしまえば、キャスティングの段階で80%以上は出来てしまっているかもしれないです。現場では技術的な面での調整などでいろいろ苦労しますけど」

■セリフがないほうが自由に動けると思うんです
板尾創路インタビューカット

――板尾さんがキャスティングされるポイント、オーディションでの着眼点などは?

「僕の場合、細かいオーディションはしないんですが、自分が脚本作る段階でイメージはできてるんですよね。今回だったら、"これは浅野(忠信)くんやな"と思って書きましたし、"これは石原さとみちゃんやな"と思って書きましたから」

――ただ、今回の場合、前田吟さんが演じた役など、落語のシーンがある方もいらっしゃって、その辺は簡単に出来るものではないので、役者さんにとってもハードルもあったと思うのですが。

「確かに、落語なんて役者さんが出来るのかなっていうのはありました。でも前田さんが落語をやるというイメージは出来ていたので、あとはどういう形になるか、というだけで。結果、前田さんの俳優としての力をお借りして、素晴らしいシーンになって。......尊敬しますね。落語って1日2日で出来るものではないし、日常やってるかのような感じでやってもらえたのは、ホントにありがたかったです」

――浅野さんは、居るだけで、そのままあの役になっているという感じが漂っていました。

「浅野くんは、すごい数の映画に出て、でも特定の色が付いてない。いろんな役が出来るっていう存在ですよね。今回の役は、見た目というよりは、さもそこに当然いるような感じ......それは、存在感というのじゃなく、ただそこにいるというあの感じはすごいなと思います。"あーキターっ!"ていう感じじゃなく、スーッとその世界に入っていく感じ。あの力の抜き加減はなかなかできないですよね」

――今回の作品のキーワードに「目は口ほどに物を言う」というフレーズがありますが、まさに芝居に関してもセリフではなくちょっとした表情、目の雰囲気で伝えるシーンが多く見られました。

「そういう演出でいきたいっていうのは最初からあったので。そこは意識してやりました」

――役者・板尾さんとしてもその部分は意識された感じですか?

「そうですね。僕はセリフはないほうが、もっと役に集中出来るし、もっと自由に動けると思うんです。ドラマや映画のセリフって...それはしょうがないんですけど......説明になってしまうんですよね。でもセリフがないほうが、武器がない分だけ、動きや表情で、にじみ出てくる雰囲気を伝えられると思うんです。あと、目......目ん玉で伝えるっていうのは大事だなと思っていて、とくに今回は包帯で目がひとつ隠されてるので、ひとつだけで伝えるという......その辺は挑戦、とまではいかないけど、かなり意識してやってましたね」

――今回も若い俳優さんがいい味を醸し出していましたが、板尾さんから、俳優を目指す若い方にアドバイスをお願いできればと思います。

「主役をやりたいとか、ヒロインやりたいとか、最初はみんなそうだと思うんですけど......それが悪いとはいえないですけど、みんなカッコよく映りたいとか、キレイに映りたいとか、そういうのが全面に出てるでしょ。そりゃカワイイ人もいるし、美人の人もいますけど、そうじゃない人もいるじゃないですか。そっちで勝負せんほうがいいのにな、っていつも思うんですよね。明らかにこの役はヒロインでもないし、なんやったらブサイクなほうが得なのに、すごく念入りに化粧したり、唇を濡らしてみたりとか(笑)、それを見てると残念な気がしますね。そういう人多いよなと思いますね」

――確かにそうかもしれないですね。

「みんな主役、ヒロインになりたい、男前に見られたい、っていう感じやけど、そんなことで選ばれるのは一握りですからね。今回、すごいなと思ったのは、根岸季衣さんがおばあさん役をやってるんですけど、衣装合わせの時、パッと衣装着て、自分で歯を汚す道具を持ってきて、ガーっと塗って写真撮ってはりましたよね。そういうおばあさんの役するとなったら、自分の色気とかキレイとかそんなんは関係なく、ババァになりたいっていう感じなんですよね。それはすごいなと思ったし、そういうもんやろうな、って思いましたね」

――まさに「役者」という感じですね。

「そうですね。女優というより役者ですよね。だから、若い子たちも、作りすぎないことやと思います。自分をどう見てもらうかっていう、変にカッコよく見えることを考えても意味はないし、備わっているもので勝負するのが大事。いじくりまわして、別のものを見せようするほど滑稽なことはないですからね」 (取材=2012年1月某日)

取材・文=田部井徹(トリーヌ) 撮影=梅木麗子

映画『月光ノ仮面』

リリース
 昭和22年、戦地から顔中に包帯を巻いた男(板尾創路)が帰郷。彼は記憶を亡くしていたが、どうやら人気若手落語家・森乃家うさぎらしい。うさぎと婚約していた恋人の弥生(石原さとみ)は歓喜するが、もう一人の男(浅野忠信)が戦地から帰ってきたことで運命はあらぬ方向へ......。
 初監督作品『板尾創路の脱獄王』に続き、板尾創路が監督・脚本・主演を務めた無敵の第二弾作品。

http://www.gekkonokamen.com/
板尾創路
いたお・いつじ
1963年7月18日生まれ、大阪府出身。吉本興業のタレント養成所・NSC4期生。1991年頃より「ダウンタウンのごっつええ感じ」(CX)などに出演し注目を集める。俳優としては「救命病棟24時」(CX)、「木下部長とボク」(YTV)など多くの作品に出演。また映画監督としても、モントリオール映画祭をはじめ国内外で絶賛されている。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
ギャラリー
主演映画「トモダチゲーム 劇場版FINAL」公開 吉沢亮スペシャルインタビュー 映画「僕のワンダフル・ライフ」日本語吹替え版出演 花澤香菜スペシャルインタビュー 「連続ドラマW コールドケース ~真実の扉~」DVD&ブルーレイリリース開始記念 豪華キャスト勢揃いスペシャルインタビュー 2nd single「アバンチュっ!/ナツラブ」発売 アキシブproject スペシャルインタビュー 「AKB48 向井地美音ソロコンサート~大声でいま伝えたいことがある~」DVD&Blu-ray発売記念 向井地美音(AKB48)スペシャルインタビュー Amazonオリジナル「東京ヴァンパイアホテル」出演 夏帆&満島真之介 スペシャルインタビュー 主演映画「ラオス 竜の奇跡」公開 井上雄太スペシャルインタビュー HKT48のこれからを背負う4期生をピックアップ☆ 地頭江音々&豊永阿紀&運上弘菜(HKT48)スペシャルインタビュー 主演VR映画「交際記念日」&主演映画「ポエトリーエンジェル」公開 武田玲奈スペシャルインタビュー 映画「トモシビ 銚子電鉄6.4kmの軌跡」主演 松風理咲スペシャルインタビュー 1stフォトブック「hungry!!!」発売 岡田結実スペシャルインタビュー アニメ「デジモンアドベンチャーtri.」出演 田村睦心&荒川美穂スペシャルインタビュー 映画「一週間フレンズ。」出演 松尾太陽スペシャルインタビュー アニメ「機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅳ 運命の前夜」出演 早見沙織スペシャルインタビュー セカンドシングル「白いシャツ」発売 CHERRSEEスペシャルインタビュー 映画「闇金ウシジマくん Part3」出演 本郷奏多スペシャルインタビュー 映画&舞台「真田十勇士」出演 望月歩スペシャルインタビュー 舞台「SAKURA-JAPAN IN THE BOX-」主演 谷岸玲那スペシャルインタビュー 映画『Only 4 you』DVD発売 花影香音Kanon Hanakage、山川未菜Miina Yamakawaスペシャルインタビュー 主演映画『ハルをさがして』公開佐藤菜月スペシャルインタビュー 主演映画「闇金ドッグス3」公開 青木玄徳 スペシャルインタビュー
SSL グローバルサインのサイトシール