――5月の公演、初日を迎えた時の気持ちは?
小関「僕は緊張してました。今まで不安がある時に緊張することはあっても、今回の様にちゃんと自信を持ってる状態で緊張するというのは、初めての経験でした」
平埜「元々緊張しぃで、どの舞台でも緊張するんですけど、いつもは舞台に出てしまえば、その緊張は少しずつ溶けたりするんです。でも、今回は緊張の仕方が違う感じでした。まず幕が開く冒頭ですごく緊張して、その後、途中、暗転になって板付きで始まる場面があるんですけど、そこでさらに緊張しました。今までにない感覚でした」
──出演者8人全体の雰囲気は?
小関「初舞台の人もいる中で、皆本当に楽しんでて、緊張してもその緊張感を楽しんでる、っていう雰囲気になってました」
平埜「(初舞台のキャストが)緊張してるように見えなかったよね?」
小関「もちろん本番前は"せりふ大丈夫かな"というような声も聞こえたんですけど、どちらかというと、楽しんでる感じでした」
平埜「僕なんか、そんな言葉も出ない状況(笑)。(舞台の)袖に行って、心で"大丈夫、大丈夫"って自分に言い聞かせる......みたいな(笑)」
──そんな中、初日を終えた時の思いは?
小関「すごく楽しかったです。達成感と満足感でいっぱいでした。元々この作品が大好きだったので、その思いを初めてお客様に伝えられたのがうれしかったです。1シーン1シーン、1せりふ1せりふごとに"どや顔"したくなるくらいの気持ちでした(笑)。終わった後は"やった!"という感じでした」
平埜「僕は、初日を終えて、"あ、変わったな"と思いました。お客さんが入って、お客さんのパワーを頂いて、"これが舞台だな"って。稽古場でやっていた時よりも、みんながすごくパワーアップしたという実感があったんです。お客さんと一緒に存在してる空間が『FROGS』という作品を大きくするんだな、って思いました」
──5月の公演を経て感じたことは?
平埜「課題だなと思ったのは喉です。フクロウは怒鳴ったりするセリフもあるので、喉に来ちゃったのは悔しかったです。僕にとっての課題です」
小関「作品をやっていると、自分の中に入ってくるものがあるんです。役の人物が自分の性格の一部なっていくというか......。今回、僕が演じたカケルは、少し気が短くて、大人に対してあまりよく思っていなくて、少し自分中心に考えてしまって......みたいな部分があって。そういう役作りをしていたんですけど、それが自分の中に入った感じがします。僕、普段全く怒ろうと思わない人だったんですけど、いいのか悪いのかちょっとしたことに怒りという感情が自分の中に出てきた感じがするんです。感情の幅が広がるという意味でいいことだと思うんですけど、怒りっぽくなったとしたら、それはどうなのかな......って思います(笑)」
──5月の公演の経験が与えたものは大きいようですね。
平埜「はい。演じる上でいろいろと変わった気がしています。稽古でずっとやってきたんですけど、実際にお客さんが入った時に、ふと体が動いちゃう瞬間があったりするんです。特にフクロウは、笑いのシーンがたくさんあったので、日によって笑いの反応が変わったりして、この間で行かなきゃいけないんだな、とか。(笑いを)欲しがったら笑いって来ないんだなとかいろいろ学びました。そういう意味では、みんなも意外と、舞台に立ってみると、"それ、稽古でやってなかったでしょ"みたいなことを入れてきたりするんです(笑)」
小関「それはあった(笑)」
平埜「本番に入って、お客さんに笑ってほしい一心で、どんどんそこをオーバーにしてみたり、それを僕が後ろから見て、"うわ、欲しがってるなー"って思ったりもしました(笑)」
──ここだけの話、誰が一番欲しがってました(笑)?
平埜「広大(松岡)と琢矢(溝口)と......(笑)」(稽古場での取材のため、ストレッチ中の本人たちを意識しながら)
(一同爆笑)
平埜「特に琢矢が欲しがってましたね。"ここ、笑いが来るポイントだぞ"って分かって、やってました」
小関「ここにいないから言えることですけどね(笑)」
平埜「そうですねー(笑)」
──でも、それが生の舞台の面白味ではありますよね。さて、7月18日からは、AiiA Theaterでの公演が始まります。ステージの大きさも変わりますね。
平埜「舞台上も広くなるし、今回、アクティングスペースが広がって、そういった部分でも5月公演と違ったものをお見せできると思います」
──ダンスシーンもよりダイナミックに。
小関「そうですね。できればと思ってます」
──そして、Special公演として、役柄が入れ替わる"イレカエル"の日もありますが、最初に聞いた時、どう思いましたか?
小関「衝撃的でした。これまでの『FROGS』公演でも裏ガエルがあったので、きっと7月公演ではそういうことはあるんだろうなとは思っていたんですけど、役を入れ替える形で、それもフクロウをやることになるとは、驚きました」
平埜「僕はカケルを演じることになって、とてもうれしかったです。今、稽古をやっていても楽しいですし、毎日充実してます」
──"イレカエル"の稽古をやってみてどうですか?
小関「一番感じるのが、自分がやっていた役(カケル)をやっているきな兄(平埜)を見て、こういう良さがあったのか、と思う時もあるし、ここは自分の方がよかったのかなというのもあるし、客観的に見て、それ自分に取り入れてみようと思ったり。たくさんの発見に繋がるなと思いました」
平埜「僕は逆にあまりそういうことを考えずにやろうと思っています。(小関)裕太のカケルがあって、そこに負けたくないからこう変えてやろう、というふうに思ったら、もちろん、そういう気持ちもあると思うんですけど、でも、それが一番上に立っちゃうと、負けちゃうなと思うので。負けたくない、というよりは新たな感情が芽生えたらそれをやってみたらいい、というような気持ちで、素直にカケルを演じるようと思っています」
──Special公演は、それぞれが成長できる場でもありますね。
平埜「フクロウってどんな役なんですか?って聞かれた時にうまく説明ができない部分があったんですけど、裕太がやっているフクロウを見て、"そうか、フクロウってこういう役なんだ"っていうのが見えてきたりしたんです。フクロウってかわいいなと思える部分も出てきたり。すごく刺激は受けますね」
小関「今回、僕にとって、演出の岸谷五朗さんの存在が大きくて、役作りというのはすごく重要なものだというのを身に沁みて感じました。その上での"イレカエル"なので、ただ役を入れ替えたというだけではない大きな意味を感じています」
──その感じているものというのは?
小関「役作りというのは、どこまでいっても正解はなくて、どれだけやっても正解にはたどり着かないんですけど、時間をかけた分だけ、そこに形が生まれていく......。それを今回は2つの役で見出していくというのが、簡単なことではなくて、すごく強いものがないとできないと思っています」
──出演者の8人、初顔合わせから半年ほど経ちました。関係性、雰囲気はどう変わりましたか?
小関「一番大きいのは、同年代ということです。当然普段の会話は和むんです。その和んだ雰囲気から、切り替えた時に作品作りに入ったって感じがして。すごくいい空気感だと思います。同年代ということで成り立っている、まとまり感があると思いますし、想像していた以上に、仲間を信頼して場を作っていけてるのかなと思います」
──生成くんはこのメンバーの中で、兄さん格になりますが、その意識は?
平埜「いや......」
小関「ずっとお兄さんですよ!」
平埜「そんなことないけど(笑)。でも、ちょっとそういう意識はありますね」
──多少、年上意識で接したり。
平埜「年上感出してるなー、って自分で思う時もあります(笑)。ダメ出ししてるよ、とか。申し訳ないと思いつつ、言いたいことを言っていったので」
小関「『FROGS』を通して、きな兄は、話し方と伝え方が代わったなと思います」
平埜「いやいや(苦笑)」
小関「言葉にする作業が全然変わったなと思って。一番は岸谷さんの存在が大きいのかな」
平埜「もちろん岸谷さんの存在は大きいです。あとは、劇団プレステージ(平埜くんが所属する劇団)も大きい。劇団プレステージは去年から乗り越えなきゃいけない壁があって、それを目の前にしていろんなことを話し合って、いろんな年上の方の意見を聞いて、それを受けて『FROGS』の場でも伝えられたらなという思いもあって。そこに岸谷さんの言葉がすごく繋がる部分もあって......」
──いい相乗効果だったんですね。
平埜「そうですね。僕にとって本当にいい場であり、いいタイミングだったなと思います」
──そんな生成くんから見た小関くんの変化は?
小関「僕、気短くなってないですか(笑)?」
平埜「それはないと思うけど(笑)。タメ口使ってるのは新しい姿だった。裕太が年下の人とコミュニケーションとってる姿は今まで見たことがなかったから新鮮だね」
小関「僕は自然にやってるんですけど、けっこう周りの方には驚かれます(笑)」
──では、お2人それぞれの今後の目標をお願いします。
平埜「僕、これから先、一生言い続けるかもしれないことをこの前思いついたんです。僕がなりたいのは、赤ちゃんみたいな存在だな、と」
──赤ちゃん(笑)?
平埜「キラキラした目、無邪気な仕草。何事にも興味があって、誰からも愛される。こんな素敵な存在はないんじゃないかなと思い、これから先、僕、一生言い続けると思います」
小関「赤ちゃんか......。この後、僕なんて言えばいいんだろう(笑)。食パンみたいな人になりたい、かな(笑)」
──どういうことですか(笑)!?
小関「いえ、それは冗談です。未来って絶対予測できないものじゃないですか、その中でいろんな妄想と、いろんな欲があって、その予測以上のものがくるとすごく楽しくなる。それがずっと続いて、いつになっても忘れないものが生まれていったらなと思います。あとは、きな兄が20歳になって、大人ってなんだろうって僕も考えるんですけど、大人になることで、見えなくなってしまうものもあると思うんです。だから、1つひとつの感情を忘れたくないので、今というものを大切にできる表現者になりたいと思います」
──では最後に。芸能界を目指す人へメッセージをお願いします。
平埜「他にも道はあるよ、と思います」
小関「どういうことですか(笑)?」
平埜「もし俳優さんになりたい、って思っていたとしても、決めつけないで、いっぱいチャレンジしよう、いろいろ見たほうがいいよ、ってことですね」
小関「僕が思うのは、とにかくチャレンジする。やりたいことだったら、チャンスをつかむために乗り出してみる。常にそうありたいなと思っています」
取材・文=田部井徹(トリーヌ)、撮影=梅木麗子