――映画『ウルトラマンサーガ』で"ウルトラマン役"が決まった時の感想は?
「お話を頂いた時は、マジで? みたいな。ビックリっていう感じでした。今までも、演じるお仕事はやらせていただいてたんですけど、ウルトラマンをやるっていうのはすごいことじゃないですか。もちろんどんな役もすごくありがたいことなんですけど、ウルトラマンは、なりたくてもそう簡単になれるものじゃないので、ホントにビックリで。"俺でいいのかな"みたいな部分もありました。最終的には、"俺にきたから俺だな"って思いましたけど(笑)。ロックミュージシャンでウルトラマンをやってる人もいないでしょうし、光栄だなって心から思いましたね」
――その後、監督やプロデューサーさんに選ばれた理由は聞かれたんですか?
「いえ、聞かなかったです、聞くのは野暮なので(笑)。そこはもう受けた時に、理由は必要ないなと思って。決めたからには全力で『ウルトラマンサーガ』を最高のものにしようという思いでいっぱいでした」
――子どもの頃、ウルトラマンにハマったことはありましたか?
「ウルトラマンは、ハマったとかそういう次元じゃないんですね。生きていると、自然にそこにウルトラマンがいるというか......。水飲んで、ご飯食べて、そしてウルトラマンがいるっていうような(笑)、そういう感覚ですよね。ウルトラマンの歌も、なぜか覚えてるんですよね。覚えようとしてないのに覚えてる......すごいですよね」
――"特撮"作品初挑戦ということですが、"特撮"ならではの苦労した点は?
「実際には目の前にないものをあるように思い浮かべながら演じるっていうのはあったんですけど、そこはとにかく思いっきりよくいきました。吊るされたりとか、大変は大変だったんですけど、現場は楽しかったですね。大変だったのは、特撮の部分よりも、ひたすら走るシーン。グビラに追いかけられて必死に走るシーンはきつかったですね(笑)。相当長時間走りました」
――"特撮"の部分に関しては、仕上がりを見て、あの撮影はこうなったのか、と後で驚いたり?
「そうですね。とくに"こうなったのか!"と思ったのは、変身シーンです。今回変身が全自動なんですよね(笑)。どんどん変身していっちゃうので、現場では想像するしかなかったんですけど、その想像をはるかに超える変身シーンになっていたので、仕上がりを見て、"俺、ウルトラマンになったんだ......"って改めて感動がありました」
――印象的な変身シーンですよね。今回、拝見していて、特撮が初めてとは思えないハマり方だなと思ったのですが。
「ありがとうございます。よく"戦隊もの出てたよね"と言われることがあるんですよ。まったくやってないんですけど(笑)。なんとなくそういうイメージがあるみたいですね」
――今回演じたタイガ・ノゾム隊員はどのように役作りをしましたか?
「ウルトラマンになりたがらない主人公という斬新な設定で、台本を読んだら、ちょっとライトなノリの、ある意味主役っぽくない、渋谷にいそうなキャラクターなんですよね。だから、僕自身も、よりライトなノリでタイガという役をやらせてもらいました。全体としては、監督と1シーン1シーンディスカッションさせてもらって作っていった感じなんですよね。ただ、唯一僕のほうから提案したのは、"フィニッシュ!"と言う時のポーズ。これは僕からお願いしました。やっぱり、僕といえばポーズだと思うので(笑)、そこはこだわっていきたいというのがありまして。監督に伝えたら、"それでいきましょう"って言ってくださって、起用されました。1~2回ぐらいしか使われてないんですけど(笑)、ぜひ注目してください」
――アーティスト・DAIGOとしては常に中心に立つわけですが、今回は主役ということで、映画というフィールドで真ん中に立ったわけで、その辺の意識はいかがでしたか?
「主演というのものは、やりたくてやれるものじゃないですけど、でも『ウルトラマンサーガ』に関しては、やっぱり主役はウルトラマンなんですよね。だから、タイガ隊員として、いかにいい感じで、ウルトラマンになるまでを導けるか、そこが大事な任務だと思って演じました。だから、主役という意識よりはその思いのほうが大きかったですね」
――タイガ隊員とご自身の重なる部分はありましたか?
「リンクする部分はありました。でも僕自身は早く変身したかったですけどね(笑)。DAIGO的にはすぐにでもウルトラマンになりたかったです(笑)」
――今回の作品に関して周りの反応で印象的なものは?
「僕のいとこの子どもが5~6歳で、ちょうどウルトラマン世代なんです。その子から『ウルトラマン負けないで!』っていうFAXが来まして(笑)。今までFAXなんて1通も来なかったんですけど、やっぱりヒーローになるとこういうのが来るんだって思いました。僕も結末は言えないので、『ウルトラマン、頑張るよ!』とだけ返しましたけどね(笑)。ちょっと思うんですけど、子どもたちの中で俺のヒーロー度がやばいことになるんじゃないか、っていうのは今感じてますね(笑)」
――子どもたちの見る目は変わるでしょうね。
「だと嬉しいですね。それと、僕がおじいちゃんになって、『おじいちゃん、昔ウルトラマンだったんだよ』って言えるっていうのはすごく嬉しいですね」
――DAIGOさんはミュージシャンですが、元々俳優に憧れはあったんですか?
「もちろん昔からドラマは見ていたんですけど、自分が演じるというのはあまり考えてなかったです。ただ、いろいろ挑戦したいっていう思いはあって、30歳になって、バラエティ番組などに出始めて、より、いろんなことに挑戦しようっていう意識が高まったというのはあります。ドラマにも出させていただいて、お芝居にはお芝居の楽しさがあるっていうことを知りましたし。ミュージシャンだから俳優は......というのではなく、やるからには自分の役を全うして、いい作品に結びつくように頑張りたいとシンプルにそう思ってます」
――俳優のお仕事には迷いなく進めました?
「昔は音楽だけを頑なにやり続けるということが自分のロックのあり方だと思っていた面もあって、もちろんそういうスタンスでリスペクトしてる方はたくさんいるんですけど、僕の場合は、自分のオリジナルの道を歩んでいくことがロックだ、っていう思いになってきたんですよね。いろいろなエンターテイメントで、自分が何かすることによって人が楽しんでもらえるならやっていきたいなって。そう思うようになったのが30歳の頃。そこをひとつのきっかけにして変わっていきましたね」
――DAIGOさんにとって、人生の方向性を決定付けた映画・ドラマ・曲というと?
「僕の中では氷室(京介)さんがやってるBOOWYの『Marionette-マリオネット-』という曲でロックをやりたいと思ったので、この1曲は大きかったですね。音楽への道の第一歩ですね」
――氷室さんはある意味ヒーロー。
「ヒーローですし、カリスマですよね。今でもカッコイイままでい続けてくれてるというのは自分の中でも生きる希望だし、ある意味ウルトラマンもそういうことなのかなって思いますよね。ずっとカッコイイままでいてくれるっていう。自分の中の希望になりますよね」
――最後に、芸能界を目指して、オーディションを受けようという人、今頑張って受けている人に対してアドバイスをお願いできればと思います。
「僕が思うのは、オーディションって何回か連続で落ちることもあると思うんですよね。でも、オーディションはそれぞれのニーズがあって、いろんなシチュエーションでやるものだから、もし何回も連続で落ちても、連続で落ちたとは捉えずに、"このオーディションはダメだったんだ"って常に思って、切り替えてやっていったほうがいいんじゃないかなと思うんです。引きずっていても仕方ないし」
――連続でダメだと、自己否定してしまいがちですよね。
「そうですね。でも、ここではハマらないけど、別のところではすごくハマるかもしれないわけですし。絶対切り替えたほうがいいですよね。だから、そのために大事なのはやり続けること。単純なことですけど、気の済むまでやるっていうのは重要なことだと思いますね。情熱を持ってやり続けること!」
――ちなみに、DAIGOさん自身はオーディションでの思い出は?
「いくつか受けましたよ。カラオケの謎のオーディションに行って落ちたりとか(笑)」
――謎の(笑)。
「なんだったかわからないオーディション(笑)。でも、それはそれでいい経験だと思います。他にも、まったく踊りが出来ないのにミュージカルのオーディションに行ったこともあったし(笑)。"この踊りを10分で覚えて踊って"と言われて......、やれるわけないですよ(笑)。でも、そういうのは気にしないっすよ。だって、やれないんだから。これは俺の近道じゃない、これは受かっても遠回りだと思えたので。もちろん落ちましたけど(笑)。だから捨てる勇気も必要かもしれないです。これは違うなと思ったら切り替えて、いいところを伸ばしていく、それは大事なことじゃないかなと思いますね」
(取材=2012年2月某日)
取材・文=田部井徹(トリーヌ) 撮影=梅木麗子